4作目

雨の休日。読み終えないといけない本が溜まっていたので1日中読書していた。

読み終えた本の中に「傘を持たない蟻たちは」があった。NEWSとしてまた作家として活動している加藤さんの4冊目の著作。発売してからずいぶん時間が経ってしまった。そして今回は初の短編集。表現の幅もぐんっと広がっていて、本当に面白かったと思う。そのうちの何作かは私の好きな星新一さんの雰囲気を思い出すような話もあって何だか懐かしかった。あの答えを出さないような感じが子供(中学時代くらいかな)ながらに、とても好きだったことを思い出したりしながら読み進めた。

気まぐれで読み始めた彼の作品も4作目かあ、となんだか感慨深かった。きっかけは本当に些細な興味と。新しく読むものを求めていた私のタイミングがたまたま一致して。そして図書館ですぐに借りられたというラッキーも重なってだった。
正直にいうと、一作目は非常に読み難くてちょっと苦戦した。毛羽立った安物の紙に使い古された万年筆の古いペン先が引っかかってガリガリとなかなか描き進められないかんじで苦労しながら読み進めたことを思い出す。合わないのかなあと思ったりもしたけれど後に、あれは短い期間で書いてきなさいと言われた上での初めての作品だと聞いて納得したのも覚えている。それぐらい、荒げずりのまだ何も整っていない文章だった。
それでもそこから2作目、3作目と進むうちにみるみるうちに読み進むスピードが変わっていった。安物の紙があっという間に上質な紙に変わり、ペン先も滑らかな書き心地の新しいペン先に変わっていった。どんどんのめり込むように読み進むことができて、あっという間に物語の中に入り込んで行く。気付けば登場人物に共感していき、同じように苛立ったり泣いたりするようになった。そして次作を楽しみにするようになった。これってもう、私の好きな作家さんと同じじゃないか。そう自覚した時に、彼はもう私の中で好きな作家さんとしてインプットされた。

私は、彼が筆を持ったきっかけを青臭くて好ましいなと思っていた。グループの存続やその為の貢献方法。自分以外の、仲間やファンのためという所がとてもいいなと思えた。
(NEWSが今新しい形で結束しているのはそういう事も一因かもしれないと想像したりもする。)
小説の執筆だなんてずいぶんと無茶なことを。と当時感じたことを覚えている。小説家は彼以外にも掃いて捨てるほどいるし、何より、今は読書離れという業界自体が危ぶまれている状況だったから。
でも彼はそれを突き進んで行った。一年に一作のペースで、レベルをどんどん上げていきその結果、映画化やドラマ化もされることになった。彼のアイドルとしての立場や、それ以外にも色々とあるんだろうけどそれでもこれが現実だ。きちんと彼の行動が届いている証拠だ。

彼が書くことを始めたきっかけが、グループのためだった。
今はどうなんだろう。
自分のために書くようになっているんだろうか。
苦しくて辛くて止めたいけれど、執筆の楽しさでこれからも書き続けて行きたいと思っていると嬉しいな、と作家・加藤シゲアキのファンである私はそう思ってしまう。